どんな人が乳がんになりやすいのか
40後半~50代がピーク
年齢別に乳がんの罹患(りかん)率(乳がんにかかる人の割合)をみると、30代後半から増え、40代後半から50代前半にピークを迎えていることがわかります。つまり、乳がんは、仕事や家事、子育てに忙しい年齢の女性に一番多いがんなのです。
しかし、閉経(へいけい)したからといって安心できるわけではありません。60代後半あたりまで、やや罹患率は低くなるものの、横ばいのまま推移していきます。日本では乳がん全体が増えていますが、年齢別にみると、これまで少なかった閉経後の女性に増え欧米型の年齢分布に近づいているというのが最近の特徴なのです。
乳がんのリスクファクター
乳がんのリスクファクター(危険因子)としては、
・ 初潮(しょちょう)年齢が早い ・ 閉経年齢が遅い ・ 一度も出産したことがない ・ アルコールや喫煙 ・閉経後の肥満
などがあげられます。
最初の月経や出産などに関連した項目はエストロゲンとの関係です。日本乳癌学会がまとめたガイドラインによると、これは、ほぼ確実に乳がんのリスクを高めるとみられています。
アルコールと喫煙は、同じ嗜好品でも少しレベルが違います。アルコールは、乳がんのリスクを高めることはほぼ確実ですが、喫煙の方は可能性があるという程度です。とはいえ、喫煙は肺がんを初め、咽頭がんや食道がんなどほぼあらゆるがんのリスクを高めるので、禁煙が重要です。
興味深いのは、肥満です。閉経後は肥満が乳がんのリスクを高めることはあきらかです。一方、閉経前の女性の場合には、逆に肥満が乳がんのリスクを減少させるという報告があります。その理由はよくわかっていませんが、肥満によって排卵@はいらん@がなくなり、女性ホルモン(黄体(おうたい)ホルモン)の分泌が停止するせいではないか、という仮説もあります。
かつては、脂肪の取りすぎが乳がんを増やしているのではないか、といわれましたが、これは十分な根拠がないようです。反対に、閉経後の運動は確実に乳がんのリスクを減らすと評価されています。更年期を過ぎたら意識して肥満を防ぎ、運動することも大切な乳がん対策です。
乳がんのリスクファクター(危険因子)チェックリスト
□ 初潮が早い(12歳未満)
□ 年齢が40歳以上
□ 出産経験がない、あるいは初産が30歳以降
□ 閉経年齢が55歳以降
□ 閉経後の肥満
□ 血縁者(特に母、姉妹)に乳がんの人がいる
□ 片側が乳がんになったことがある
□ 乳房の病気(乳腺炎など)になったことがある
□ 子宮体がん、卵巣がんになったことがある
□ 多量の飲酒
□ 喫煙
良性の乳腺の病気も注意が必要
放射線の大量被曝も、乳がんの確実なリスク因子です。 そのほか、良性の乳腺の病気も場合によっては注意する必要があります。たとえば、乳腺症は乳がんとは直接関係のない乳腺の変化です。ところが、こうした乳腺が良性の変化を起こした人の中に、のちに乳がんを発症するケースがあるのです。特に、「異型過形成<いけいかけいせい>」の場合が要注意とされています。 過形成というのは、簡単にいえば細胞が過度に増殖して増えるという意味です。がんと似た印象を受けるかもしれませんが、イボやタコも過形成の一つです。過形成はよく見られる良性の変化です。ところが、これに異型性が重なると、将来のがんの危険度が高まるのです。 がんの病理診断は、顕微鏡で細胞の「顔つき」を見て行われます。がんとは違うが、正常細胞とも違う形をした細胞のことを異型細胞といいます。乳腺の病気で、細胞が過度に増殖し、細胞の形も少し変化しているような場合には、良性の変化と判断できても、定期的に検査を受けたほうが安心です。