トリプルネガティブ乳がん

トリプルネガティブ乳がんの特徴と治療法 1. トリプルネガティブ乳がんの概要 トリプルネガティブ乳がん(Triple Negative Breast Cancer: TNBC)は、乳がんの中でも特に治療が困難なタイプの一つです。乳がんには様々な亜型が存在し、それぞれのがん細胞は異なる生物学的特徴を持っています。その中でも、TNBCはホルモン受容体(エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体)とHER2(ヒト上皮成長因子受容体2)という三つの主要な分子マーカーが陰性であるため、他の乳がんと比べて治療選択肢が限られるのが特徴です。 ホルモン療法やHER2を標的とした治療が効かないため、化学療法が治療の主軸となるケースが多いです。トリプルネガティブ乳がんは全体の乳がん症例の約10~20%を占め、特に若年層やアフリカ系アメリカ人女性に多く見られます。加えて、進行が早く、再発リスクが高いという特徴があり、他のタイプの乳がんと比べて予後が悪いことが知られています。 2. トリプルネガティブ乳がんの生物学的特徴 トリプルネガティブ乳がんの特性は、ホルモン受容体やHER2に依存しないことに起因しています。具体的には、以下の三つの受容体が陰性であるという点で診断されます。 エストロゲン受容体陰性:エストロゲンによる増殖シグナルがトリガーされないため、ホルモン療法の効果が期待できません。 プロゲステロン受容体陰性:プロゲステロンががん細胞の増殖に関与しないため、こちらもホルモン療法の対象外となります。 HER2陰性:HER2は、細胞の増殖や生存に関わる受容体ですが、これが陰性であるため、HER2を標的とする薬剤(トラスツズマブなど)は効果がありません。 これらの特徴により、TNBCは一般的に他の乳がんと比べて治療が難しく、化学療法に頼らざるを得ない場合が多くなります。また、遺伝子レベルでの特徴として、BRCA1やBRCA2遺伝子に変異がある場合が多いことも知られており、この場合は特に若年層に発症する傾向があります。BRCA変異はDNA修復機構に影響を与え、がんの発生リスクを高める要因となります。 3. トリプルネガティブ乳がんの治療法 トリプルネガティブ乳がんの治療は、他のタイプの乳がんと異なり、ホルモン療法やHER2標的治療が使えないため、主に化学療法が中心となります。ここでは、主要 … 続きを読む トリプルネガティブ乳がん