質問4

質問4

5年前に左乳房の外上部に1センチの腫瘤が見つかり、乳がんと診断され、温存手術を受けました。病理検査の結果、リンパ節転移はなく、放射線治療は必要ないとのことで、ホルモン療法を受けてきました。手術後、最初の2年間はリュープリン(一般名 酢酸リュープロレリン)の注射を、3年目からは飲み薬のノルバデックス(一般名クエン酸タモキシフェン)を服用してきました。

手術前は生理がありましたが、手術後、リュープリンの注射を受けるようになってからはありません。今年の夏で、手術を受けてから5年経ちます。主治医からは「5年経過したら、ノルバデックスの服用を中止する」と言われています。再発の不安はいつも持っています。手術を受けて5年以上経てば、ノルバデックスを内服する意味はないのでしょうか。また、5年経過した後、再発を防止するために内服する薬や治療はないでしょうか。(長野県 48歳 女性)

アドバイス

詳細に関して不明な点もありますが、結論から申し上げるとホルモン療法を5年で終了し、経過観察でよいのではないかと私は考えます。1cmの腫瘍でリンパ節転移がなく、これまで5年間ホルモン療法をやっておられます。手術時43歳という年齢を考えれば放射線治療を追加することが標準的ですが、ここでの本題ではなく、また今更照射することはないのでこの問題は省略します。

この御質問をよく読んでみると、医学的な疑問というよりも、このまま何も治療することがなくなってしまうこと自体がご本人にとって不安なのではないかと思われます。そうしたお気持ちは良く理解できますし、そのような訴えを耳にする場面は実際に何度もあります。ただホルモン療法にも副作用、たとえば骨粗しょう症の進行や子宮体がんの増加などのデメリットもあるためむやみに治療を継続することが安心、安全なわけではないことを理解していただく必要があります。

一般的にはホルモン療法は5年間で終了することが標準的ですが、ノルバデックス終了後にさらにアロマターゼ阻害剤(商品名フェマーラなど)を追加すると再発率が低下するというデータもあります。このため実際の方針を決めるに際しては、腫瘍の病理学的な異型度やHER2蛋白の増幅の有無などの腫瘍の細かい条件を考慮した上で、ホルモン療法を継続することで得られるメリットとデメリットを総合的に判断する必要があります。手術後かなり時間がたっても治療法が変わるという節目には何かと不安な気持ちに襲われるものです。もう一度主治医と話し合って今後ホルモン療法を継続するにしても、治療を打ち切るにしても気持ちの整理をしておくことが必要でしょう。

2007年3月:雑誌原稿より