ASCO論文(2011年2月9日)
Axillary Dissection vs No Axillary Dissection in Women With Invasive Breast Cancer and Sentinel Node Metastasis JAMA. 2011;305(6):569-575
昨年ASCO(アメリカ臨床腫瘍学会)で注目された試験結果が2011年2月9日論文として発表され注目されています。
試験の概要:センチネルリンハ゜節生検で1~2個の転移を認めた患者さん(乳房温存手術+放射線照射例)のリンハ゜節郭清を行っても再発率、生存率の改善に貢献しないという話です
以下は同僚との私的なメールからの引用です
The Z0011 trialは、腋窩転移リンパ節を放置しても、生命予後に影響を与えないかどうかというOncologyの長年の命題に正面から挑んだわけではなく、乳房照射により、下部腋窩が照射野に含まれ、またn(+)ということで、術後補助治療が施行される群の患者には腋窩郭清を省略できるかというpractical な問いに答えを出そうとした試験です。
noninferiority を証明するために1900例の登録と、500例のevents が必要とされています。しかしながら、症例集積が進まず900例で打ち切りになっています(94 events)。この状況でこのデータをどう解釈して、実臨床につなげるかの問題だと思います。(1)術中判断でかなり転移がありそうな症例は腋窩郭清を行う、(2)術中迅速診断で(-)だったが、あとで(+)と判明した程度の症例はそのまま郭清を行わないという対応はコンセンサスが得やすいと思われます。
その他をどうするかということになると思います。個人的には、術中センチネル陽性と出た場合、迅速診での転移の程度、手術所見、腫瘍径、癌のサブタイプ、術前化学療法の有無、本人の体型などを考慮して、リンパ節のサンプリング追加(数個)~下部腋窩郭清~レベル1郭清~レベル1,2郭清という段階的な対応をしています。(現実問題としてサンプリングを追加してもmorbidityに有意な差はないように思います)
The Z0011 trialが不十分なstudyだったため、センチネル+でも生検のみで終わらせることはせず、(術中に判明しているなら)サンプリングあるいはそれ以上の追加手術を加える流れが当面続くと思います。臨床経験の蓄積、cancer biologyの理解、薬物療法の進歩,さらに画像診断、照射技術の進歩が加わり、バランスのとれた腋窩治療がわかってくると考えています。臨床を変えていく重要なtrialだとは思いますが、現場の変化はそれほどdrasticではないと思います。